2015年2月15日 (日)

世界の傑作戦闘機とレシプロエンジン

Fightersandengines 「世界の傑作戦闘機とレシプロエンジン」(枻出版社)を読みました。
 A4版の、全カラー140ページ強。前に紹介している同社ムックの、同系列のものですね。DVD付きの。

 表紙に「レストア職人が大戦機エンジンの全貌と真髄を解き明かす」とある通り、エンジンが主で機体が従の珍しい(?)本。腕時計で言えば、ムーヴメント──中身の機械をフィーチャーした類(は珍しくはない)の。
 佐藤雄一さんなるレストア職人がいらっしゃって、アメリカの専門会社(!)で2008年から働いてるんだそう。日本人では唯一で、元々はオートバイのレースメカニックだったらしい。その方が、「本書ではエンジン項目の執筆・写真撮影・ビデオ撮影を担当」されている。

●ダイムラーベンツDB601/DB605(液冷倒立V型12気筒33.9/35.7L)ドイツ
 主敵マーリン系列と違って、あまり発展しなかったんだそうな。パワーアップ面でも、2000馬力を超えられずに。
 シリンダーは、ヘッド及びシリンダー(片側6気筒)が一体構造。マーリンと違って。
●BMW801(空冷星形複列14気筒41.8L)ドイツ
 2ヴァルヴ空冷エンジンながら、燃料噴射(上記DBも同じく)や「コマンド・ゲレーテ」なる統合制御システムを搭載。特に後者は複雑な機構により、スロットルレバー操作のみで「スロットル・バルブ、エンジン回転(プロペラ・ピッチ)、燃料噴射量、点火時期、スパーチャージャー・ギア切り替えなど」を自動制御してくれる。
 しかし「完全エンジン交換仕様(運転時間管理してエンジンごと交換する)」のため、補機類・周辺配管などの整備性は良くないそうな。
●ロールズロイス製マーリン(液冷V型12気筒27.04L)イギリス
 (省略)
●ブリストル製セントーラス(空冷複列18気筒53.6L)イギリス
 スリーヴ・ヴァルヴの希少エンジン。スリーヴが固定されずに上下および回転運動し、シリンダー側面ポートに対して弁の役割を果たす。
 しかしロータリー・エンジンの場合と同様に(?)、オーソドックスなエンジン形式が頭打ちせず性能向上を果たしたため、メリットが薄くなったんだそうな(笑)。
●ライトR-1820サイクロン9(空冷星形9気筒29.9L)
 当時の(短縮した)ラインや工作機械を、現在も使ってるんだそうな。その方が良いと。
●シュベツォフAsh-82(空冷星形複列14気筒41.2L)ソヴェト連邦
 La-9なる、大戦に間に合わなかった高性能機に搭載されたんだそうな。朝鮮戦争で活躍したのだと……。
 またBMW801と同形式で大きさ・性能などが似通ってるため、ドイツ戦闘機Fw190の新造レプリカ・キット機にも用いられたんだそうな。
●中島 栄21型(空冷星形複列14気筒27.9L)
 (省略)

 DVDは、上記エンジン(BMW801及びAsh-82を除く)の整備/試運転や当該エンジン搭載機の飛行映像など81分。残り8分は、大戦機ムック/DVDの宣伝映像で。
●マーリン
 フェラーリ等スーパーカーのNA高回転V型12気筒エンジンと異なり、スーパーチャージャー過給の低回転エンジンならでは(?)の野太い音。マグネトー単体のスパーク・テストが、ガス台の着火放電みたいで面白い(笑)。
●DB601/DB605
 燃料噴射ならではと言う、始動性の良さやアイドリング回転(?)の安定性に驚き。マーリン等キャブレター方式の場合は何十秒もセルフモーターを回すのに、DBはキュルルッと一発始動して。
 また倒立ゆえ排気ポートが丸見え(ベンチ運転時)で──排気パイプが短いのはマーリンも同じだけど──、排気ヴァルヴ2つが赤熱して見えました。
●セントーラス
 エンジン音が、他と比べて乾いて聴こえました。
●栄21型
 零戦32型の新造レプリカ機に、搭載予定だそうな。

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2012年11月25日 (日)

赤塚聡『ドッグファイトの科学』

Scienceofdogfight 赤塚聡『ドッグファイトの科学』(サイエンス・アイ新書)を読みました。空自でF-15Jパイロットをされた、1966年生まれの航空キャメラマン/ライターが書いた。

 前に紹介した同新書の『銃の科学』と同じく、図・写真が豊富で見開き2ページが基本1トピック(右ページが図・写真)の構成。飛行機の3次元運動が優れて物理的ゆえ、基本飛行の概説では数式・表の引用も少なくない(読み飛ばしても良いでしょう)。
 戦闘機の基本運動および戦闘機動。機関砲やミサイル等の武装。レーダーや防御装備。戦訓の歴史。曲技飛行の技。戦闘機およびパイロットや空軍についてのFAQ。それらについて、平易な文章で──軍事的な文体を避けて書かれていました。

 飛行機──特に戦闘機は、物理的な運動把握が殊更に重要な乗り物のようです。位置エネルギー(高度)と運動エネルギー(速度)を相互に変換しつつ、高G下でのエネルギー損耗を気にしながら戦う。いくら大パワー機でも、保持する物理エネルギーを失えば急激に蓄えることが出来ないので。

 方向舵(垂直尾翼の可動部)は、さほどは重要ではないよう。飛行機は二輪車などと同じく、曲がる方に機を傾け──ロール(バンク)させて曲がるので。直進しながら方向舵を切っても、機が水平面に傾いて横滑り直進するだけだと。(使い道が、無いわけではない)
 旋回操作はロールだけでなく、縦Gを受け止める地面と接していないので機首を引き起こしながらになるよう。(背面飛行なら逆?)

 ドイツ統一後、東側装備だったMiG-29や兵装が運用されたそうな。いまは分かりませんが。(ユーロファイターに更新された?)

 F-16は、AIM-7スパロー──中射程空対空ミサイルが装備できなかったそうな。大きくて。AIM-9サイドワインダー(短射程~)とランチャーが共有の、AIM-120が1991年以降に配備され始めるまで中射程~が積めなかったと。

 朝鮮戦争──史上初のジェット戦闘機同士による空戦となった──に関して言われている、F-86(アメリカ機)とMiG-15(ソヴェト機)の撃墜率。10:1とか言われてきたけど、近年の研究では1.8:1ぐらいだったそうな。

 ヴェトナム戦争では、ドッグファイト復権の戦訓が有名です。ミサイル万能信仰(?)が篤く、もう機関砲による近接ドッグファイトの時代じゃなかろう……と見ていたアメリカ。しかし当時は未だミサイル改良の余地が多くて、北ヴェトナム側MiGとの近接戦に苦しめられたと。その戦訓から、F-14~16が開発されることになったと。ドッグファイトも重視した。
 しかし同戦争における、「戦爆連合(ストライク・パッケージ)」の進化については知りませんでした。当初は爆撃編隊80機中で爆撃機が30機近くだったのが、後には8機程度に減らしつつ、同等以上の戦果を上げたと言う。技術や運用の進歩により。

 フォークランド紛争(1982年)が、空対艦ミサイル(エグゾセ)の史上初の戦果だったそうな。アルゼンチン機が、イギリス艦を沈めた。(でもイギリスが勝った)

 サッチ・ウィーブなる、2機編隊による有名な戦術機動。2次大戦中に、アメリカ人パイロットにより考案された。それより前にドイツ人パイロットが考案した、ロッテ戦術──1対1を避け2機編隊を基本とする──に次いで多く名前が出てくる。
 そのサッチ・ウィーブの機動が、本書の図による説明でやっと理解できました。文だけだとアレなので、書きませんけど(笑)。

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2012年7月29日 (日)

現存欧州大戦機アーカイブ

Ww2europeanwarbirds 「現存欧州大戦機アーカイブ」(枻出版社)を読みました。
 A4版の、(三面図を除いて)全カラー140ページ強。前に紹介した同社ムックの、同系列のものですね。DVD付き。

 現存する飛行可能/展示機を対象とした、タイトル通りの写真主体ムックです。戦勝国のイギリス機が最も多く、次いで先進戦闘機王国だったドイツ、ぐんと離れてソヴェト・イタリア・フランス機が数機ずつ。
 ドイツは兎も角、ヨーロッパの大戦機はイギリスすらも主力のスピットファイア及び傑作エンジンのマーリン(ロールズロイス製の液冷V型12気筒)ぐらいしか知らなかったので──シーフューリーは知りたくても日本語資料は希少?──、とても興味ぶかく為になりました。

●イギリス
 主力戦闘機スピットファイアは、主翼の平面形状が好きじゃありません。尖った楕円形が、蛇の目マークと相まって蛾のようで。でも翼端を真っ直ぐ切り落とした低高度タイプ(知らなんだ)は、なかなかに格好よかった。また、パッカード(アメリカ)製マーリン──自国エンジンの外国ライセンス生産版を積んだのも有ったって驚き。
 洋上航空兵力が貧弱だった理由は、「海軍艦載機とパイロットは、すべて空軍の管轄下に置く」なる取り決めゆえだったそうな。同じく洋上~が貧弱な独伊が主敵で、日本帝国海軍とガチンコじゃなくて良かったねぇ(笑)。
 海軍機ホーカー・シーフューリーは、実戦配備が1947年とF8F(日本の降伏直前)どころじゃない遅さ(笑)。でも朝鮮戦争において、ソヴェト新鋭ジェット戦闘機のMig15を2機も撃墜したそうな。「究極のレシプロ戦闘機」の看板に偽りなしだね。
 ネピア製セイバー──液冷H型24気筒(!)エンジンの写真が強烈。いや、水平対向12気筒エンジンを上下に重ねた(?)構造が醜悪。トラブル頻発で、搭載機体のタイフーンともども見事な「駄っ作機」だったそうな(笑)。
 グロスター・ミーティアは、大戦末期に実用化されたジェット戦闘機。しかし先行したドイツのMe262とは異なり、レシプロ機にも劣る低速度(656km/h)だったそうな。戦後に大幅な性能向上を図ったものの、朝鮮戦争ではMig15に完敗したそうで……。
●ドイツ
 ダイムラーベンツ製DB601A──液冷の倒立(逆)V型12気筒エンジンの、飛行可能機と思しきの写真が素晴らしかった。機首パネルを剥いだ架装状態の、ピカピカの外観が美しいこと。搭載機体のBf109は好きじゃないし、DB601Aも単体では倒立レイアウトが奇異に見えます。でも、架装した半ストリップ状態だと抜群に格好よかった。機械ものは、やっぱりドイツ製だねぇ(笑)。
 Fw190A──わたしも好きな──は、リバース・エンジニアリングした新造レプリカが有るそうな。エンジンは、アメリカP&W製R-2800を積んでるそうだけど。
 Me262──世界初の実用ジェット戦闘機も、新造レプリカが有るそう。5機を製造する内、2012年は第四号機が公式飛行予定だそうな。
●ソヴェト
 Yak-3は、液冷V型12気筒エンジンの優秀機だそう。飛行可能機が残っていて、また当時つくった工場による新造レプリカ(アメリカのアリソン製エンジンを搭載)も有るのだと。また大戦中は、亡命フランス軍にも供与されたそう。
 La(ラヴォーチキン)-9なる、1946年に進空した高性能機も有ったそうな。F8Fやシーフューリーと同じく、空冷星形エンジン搭載の。知らなんだ。かつて中国軍機だった、唯一の飛行可能機がニュージーランドに有るのだと。

 DVDは、全1h14m。「フライング・レジェンド(32m)」「ロールス・ロイスV12エンジンデモラン(12m)」「D.H.82タイガー・モス空撮(6m)」「ワック告知(23m)」と、最後のDVD広告が長め(笑)。まあ、映像提供元なんでしょうけど。
 「フライング・レジェンド」は、イギリスのエアショー。毎年7月に、ダックスフォード飛行場──バトル・オブ・ブリテン(イギリス本土防空戦)の基地にもなった──で行われると言う。種々のイギリス機──とりわけ多数のスピットファイアを中心に、数十機の飛行可能な欧米(ドイツやソヴェトも含む)の大戦機が集った。それらの飛行映像が多数あるものの、Fw190Aは展示機のみ(?)で残念でした。でも、エアレーサーじゃないシーフューリーの飛行映像が素晴らしかった!ド迫力のアヴロ683ランカスター──10t地震爆弾を積めたイギリスの四発重爆──も同じく。なぜかムックでは取り上げられなかったYak-11は、高速かつ機敏そうなムーヴで。
 「ロールス・ロイスV12エンジンデモラン」は、上のショーで(?)三基を地上の台車に載せて回しているもの。ロールズ・ロイス作業着のスタッフたちが、エンジン後ろでプロペラの強風を受けながら(笑)。名機マーリンが2基(3翅プロペラ装着)で、その拡大版グリフォン(二重反転6翅プロペラ装着)が1基。収録時間の半分ぐらいは、グリフォン(銘板表記「GRIFFON V.12 MK58 36.7 LITRE」)が単独で回ってます。それが見ものかな。後半ではマーリンが加わり、三基でハーモニー(?)を奏でてました。
 「D.H.82タイガー・モス空撮」は、大戦中の複葉練習機(複座)に試乗したもの。飛行は穏やかそのもので(エンジン音と風圧は兎も角)、なだらかに広がる田園風景(?)の方が印象的でした(笑)。このような田舎(?)でも、交差点は例の「ラウンドアバウト」──信号機が無いロータリーなのね。
 「ワック告知」は、ワックの大戦機DVDの広告。空撮やコックピット映像(飛行時および駐機時)の。あまり零戦や隼は好きではないけど、飛行可能機におけるエンジン始動手順をも含めたコックピット映像は興味ぶかそう。

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2012年5月14日 (月)

世界の傑作機 No.148 グラマンF8Fベアキャット

Seketsu148 「世界の傑作機 No.148 グラマンF8Fベアキャット」(文林堂)を読みました。
 十年前──平成14年には「No.94 グラマンF7F/F8F」が出ていますが、今回は待望のベアキャット単独フィーチャーです。

 大戦機の中では二番目ぐらいに好きな、アメリカ艦載機であるベアキャット(一番目は鍾馗。やはり二番目ぐらいはFw190A)。第二次大戦にギリギリ間に合わなかったものの──最初の実戦部隊が空母で向かう途上で日本が降伏した──、ホーカー・シーフューリー(イギリス艦載機)と双璧をなした究極のレシプロ戦闘機(らしい)。しかしシーフューリーよりも不遇(?)で、実績(制空戦闘機としての)・エアレーサー戦績ともに(量的に)劣っていたらしいと言う……。
 ブルーズ──アメリカ海軍のアクロバット展示飛行部隊「ブルーエンジェルズ」の二代目機としても、1946年から三年間使われた本機。またレシプロ飛行機のFAI(低空)速度記録も、いまもってレアベア──本機改造のエアレーサーが出した1989年の850.25Km/h(!)が最高であるそうな。

 ゼロ戦を叩き潰したF6Fヘルキャット──いわゆる「グラマン戦闘機」と同じ二千馬力級エンジンを用いながら、大幅に軽量・小型化した後継たる本機。そうは言っても日本機のような細さは感じられず──雷電・紫電改などインターセプター(迎撃機)は太いけどね──、太く(ゼロ戦より)短い胴体は佐山サトル(初代タイガーマスク)の如きチビマッチョ(?)を思わせます(笑)。
 しかし小さな機体ゆえの武装・(爆弾など)積載量の貧弱さ、重積載時の航続距離の短さは如何ともしがたかったと。それらの点でヴォート製F4Uコルセアはおろか、グラマンがベアキャットの手本としたFw190A(ドイツ)にも劣っていたようです。

 記事内では、烈風──開発が間に合わなかったゼロ戦の後継機との比較もされています。ゼロ戦の最強幻想が捨てきれず水平面の格闘戦に拘り、垂直面の高速横転に劣ったであろう烈風では(一撃離脱とロッテ戦術において)本機に敵わなかったであろうと。
 むしろ日本海軍の切り札は、紫電改5型──エンジンを誉からハ43に換装した──であったろうと。しかし同じ誉を積んだ疾風(陸軍機)より50km/h遅かった紫電改に、それだけのポテンシャルが有ったかしら……。

 本書の海軍・海兵隊のF8F装備部隊史を読むに、旧式のF4Uを本機の後に装備する部隊が少なくありませんでした。中には、F4U→F8F→F4Uと機種転換していった部隊も。勿論より高年式のF4Uに更新されてるんだけど、旬を逃した純戦闘機ゆえの悲哀を感じますねぇ……。

 朝鮮戦争時は、純戦闘機はジェット化されてました。空軍はF-86セイバー、海軍はF9Fパンサーと。対地攻撃にはF4Uが重用され、ゆえに出番が無かったベアキャット。やっとの実戦は、第一次ヴェトナム戦争におけるフランスへの供与機としてだったと。
 大戦中は、ヴェトミンを支援していたアメリカ。戦後にフランスが植民地支配に戻さんと介入すると、反対のフランス側を支援し始めます。共産化ドミノを恐れて。その一環で供与されたベアキャットが、1951~1960年に使用されたと。F4Uは戦闘攻撃機として現役だったため、余剰の本機が回されて。
 当初フランス軍は、イギリスが接収していた隼II/III(日本陸軍機)も短期間用いたそうな。その後はスピットファイアやモスキート(共にイギリス軍機)、P-63C(アメリカ陸軍機)などを経て本機が使用されたと。地上攻撃機として全くの不適格ではないながらも、対戦闘機戦闘で最強をめざした故の小型軽量化が仇なした戦場であったと……。

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2010年9月20日 (月)

エアロ・ディテール32 川崎 キ100 五式戦闘機

Aerodetail32 「エアロ・ディテール32 川崎 キ100 五式戦闘機」(大日本絵画)を読みました。
 2010年1月に出た同書。A4に判型変更されてからは、2003年4月に出た「二式大艇」以来の二冊目です。

 実機が現存する軍用機を、樹脂模型愛好者の参考に(?)と、ディテール写真/図解で詳説する本シリーズ。故に、わたしが大好きな鍾馗が取り上げられる可能性は無し。
 大半が第二次大戦機で──例外はF-15およびF-4──、過半が戦闘機(制空/迎撃/攻撃)。残りは上述の二式大艇──偵察機や、爆撃機など。ソヴェト機は無し。
 実機現存とは言っても、現状がオリジナルに近い機体が対象。エアレースのためなどに激しく改造された機体は、撮影の主対象になりません。

 で、本書の五式戦闘機。イギリス王立空軍博物館に、世界で唯一現存する機体。そこでのリストア(復元)作業に直接たずさわった著者(イタリア人?)──妻と共に──が、その際に撮った豊富な分解写真、自ら描いた三面図・透視図などで図解・詳説したのが本書。
 本機体写真が、40ページ強(リストア前の遍歴写真を含む)。図解が20ページ強。本機体ではない、戦中および敗戦直後の記録写真が6ページ。前書「32 二式大艇」の方が約30ページ多いですが──キャビンが段違いに広いしねぇ(笑)──、本書も内容に不足は感じませんでした。

 そして、五式戦闘機(陸軍機)について。三式戦闘機「飛燕」で不良・不調が頻発した水冷倒立V型12気筒エンジン──基は名機のダイムラー・ベンツ製エンジンDB601のライセンス生産品を、三菱製の空冷星型二列14気筒エンジン「ハ112-II」(海軍名称「金星62型」)に退化改修(?)した機種。大戦末期にもかかわらず、最高速度580km/hどまりで。パイロットには、四式戦より好評だったそうだが。
 と言う経緯を読みかじってて、飛燕および五式戦にほとんど興味が湧かないままでした。前に紹介した本が飛燕の機体ポテンシャルを絶賛していたので、ちょっと見る目が変わったけど。

 でも本機体の優美な実機写真を見て、抱く感慨も変わりました。リストア状態も、素晴らしかったせいか。
 細身なV型エンジンに合わせた機首を、大直径の星型エンジン向けに改修。機体の側面前部を広く二重外皮にし、その段差を滑らかに繋ごうと。それでも第二次大戦前の単発機の如く、大径かつ短い機首が目立つけど。
 せめて、2000馬力級エンジン「ハ43」──金星の18気筒版が積めたら良かったのにね。大戦末期に、1500馬力級の金星って……。そうすれば2000馬力級「誉」を積んで最高速度600km/h未満だった紫電改より、よっぽど良く飛べただろうに。(画餅だね)

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2010年8月22日 (日)

渡辺洋二『決戦の蒼空へ』

Kessensoukuu 渡辺洋二『決戦の蒼空へ』(文春文庫)──副題「日本戦闘機列伝」──を読みました。
 同著者は同文庫の、『未知の剣』──副題「陸軍テストパイロットの戦場」──を読んだことがあります。

 約380ページ。陸海それぞれ、七編ずつのトピックが扱われています。〔陸軍編〕に二式単戦「鍾馗」が入っており──ページ数も「紫電」に次いで多く──、それで読みました(笑)。(『未知の剣』では、鍾馗も審査対象として登場)
 雑誌やムック「世傑」などに、掲載された記事を集めた本。ゆえに、形式・切り口も様々。インタヴューの対話形式そのままだったり、特定の部隊やパイロットの転戦を追いかけたり、類型(復帰した隻腕パイロットなど)を集めたり、戦中パイロットの戦後飛行人生(民間ヘリコプター)だったり。

 海軍試作機「震電」──プロペラが機首ではなく尾部に有る──については、(平成15年に)新たに聞き取った話だそう。本格的な飛行試験を迎えず敗戦となったものの、思いのほか良い出来であったそうな。三菱製エンジン──「金星」の18気筒版は最初から良く回り、エンジン艤装も良く、機体・火器も「スタンバイ乃至はあと一歩のところにあった」のだと。既出だそうだが、量産時は1.2倍径ぐらいの幅広四翅プロペラに変える予定だったそうな(試作機は六翅)。
 鍾馗の記事は、飛行第七十戦隊について。本土防空において、唯一敗戦まで“鍾馗だけ”を使い続けたという。対戦したF6F(アメリカ海軍機)の評価は、上昇力は鍾馗に劣るが低高度では勝る“強敵”。P-51(アメリカ陸軍機)の評価は、速度および高高度で勝る“難敵”だそうな。
 四式戦「疾風」の記事は、二式戦「鍾馗」から機種改変した飛行第四十七戦隊──いわゆる「かわせみ部隊」の後身──について。鍾馗に比べて疾風は、落ち着いた飛行特性で高高度性能に勝り飛行時間が長い等、おおむね上回ったという意見。逆に水平巡航速度は15~20km/h劣り(精密設計18気筒エンジンの、工作精度が悪化したせい?)、昇降舵などが重かったそうな。

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2009年8月24日 (月)

山口九郎右衛門『太平洋戦争は勝てる戦争だった』

Katerusensou 山口九郎右衛門『太平洋戦争は勝てる戦争だった』(草思社)を読みました。

 大半の内容は、旧軍の航空行政を批判し再考する──著者の言では「リモデル」する本。タイトルから想像するような、ひどいトンデモ本──「日本は悪くない」「運が悪かった」「一部の非国民・売国奴のせいで負けた」的な──ではありません(笑)。まあ、そういう要素も皆無ではないけど。
 と言う様に、“意外と”まともな内容。この手の本(?)は、小説にしろ歴史分析(と著者らが称するもの)にしろ読んだことないけどね。『皇国の守護者』や、烈風(零戦の後継機)が間に合っていたら……的な飛行機本にしろ。

 なぜ買ってまで読んだかというと、二式戦闘機「鍾馗」(陸軍機)の潜在性能を大いに評価し、興味深いリモデルを行っているから(出先の、ヨーカドー内の本屋で手に取った)。表紙絵のとおり──Ta152Hよりも繊細な平面形だね──、著者による(潜在性能)最高評価機は三式戦闘機「飛燕」(陸軍機)なんですけどね(笑)。
 昭和六年生まれの著者も、単なる飛行機好き素人ではないようです。戦前からグライダーを操縦し、戦後は昭和石油に入社し(ここが独自視点のポイント?担当職務は分からんけど)、半独学ながら(?)航空技術(レシプロ機まで?)・生産工学などを長らく研究しているようだし。

 著者のifは、一つ一つは不可能事ではありません。しかし、あまりに大幅かつ多岐に渡りすぎて、それらが半分すら出来ていたら最早“戦前昭和日本”ではないでしょう。
 それらのifは、大まかには下記のとおり。「大義がなくても」勝てる──もしくは(日中戦争に遡って)戦わずして負けない戦争であったと。
●人造石油技術の実用化
 ドイツは、石炭を液化し石油化していたそうな。早い時期(1930年前後)から独自開発で実用化するか──1932年に虚偽の実用化成功は報告されていたそうだが──、開戦間際に差し迫ってからでもドイツからライセンス取得とけと(史実的にも、そう主張されたそうな)。
 そうすれば高オクタン価のガソリンが使え、エンジンが──戦闘機が設計性能を発揮できていたと。そもそも、アメリカによる石油禁輸が意味をなさなかったと。
●陸海から独立させた「空軍」の設立(イギリス・ドイツのごとき)
 航空兵力の陸海分立行政により、戦闘機開発・運用に大きな無駄が生じたと。やはり実際に統合の主張があったが、主に海軍側によって潰されたと。
 まあ日米は、英独とは事情が違いそうですけどねぇ。航空母艦の“大規模運用”をしていたのは、当時は日米だけでしょうから。日本は空母運用が不可能になってからは、統合すべきだったんでしょうけど。
●戦闘機開発の大幅整理および有望機種の段階的性能向上(やはりイギリス・ドイツのごとき)
 日米は空軍統合がされず、やはり同様に試作機発注が乱発されていた。しかし日米では、物量・国力のバックボーンが違うと。性能向上の余地がある有望機種を絞り込み、基本設計の長所を殺さない──零戦などの主翼を切り詰めても重戦闘機にはならない──段階的性能向上(基本的には、高出力エンジンへの変更)と、性能向上の限界を睨んだ無駄のない新規開発をすべきであったと。
●「科学的管理法」を採用した「少品種大量生産」の励行(部品・規格などの共通化を含む)
 「科学的管理法」は、アメリカのそれ──古き名も無き無数の生産改良者たちを「ヤンキー」と褒め称えている──を学んだ呉海軍工廠・一部の航空機メーカーは行っていた。しかし航空機およびエンジンの種類が、いかんせん「多品種」生産であり過ぎた。機種・エンジンを絞り込み、一工場につき一機種/一エンジンとして製造すべきであったと。
 あと熟練工が無思慮に徴兵され、さらに生産性・品質が低下していったと。
●政略的な航空機の大増産
 1938年に航空機増産の大号令を発したルーズベルト大統領に比べて、日本は対アメリカ開戦後一年間すら増産が低調であったと。緒戦の勝利に浮かれて……。

 最も興味が有るのは、やはり鍾馗のリモデル。次いで、その他の絞り込み機種選定およびリモデル。
 鍾馗はリモデルを続け、最後までB-29迎撃の主力とすべきであったと。四式戦闘機「疾風」へと引き継がせず。まずは機首カウリング(エンジン覆い)を、Fw190A(ドイツ戦闘機)の手法に倣って絞り込む(→空力性能の向上)。薄翼を層流翼に変更し、搭載燃料を増量する(→行動半径/時間の増加。防弾処置余地の増大)。そして、「誉」へのエンジン変更。そのようにしてB-17~B-29を太平洋上で一定割合(来襲ごとに30%)こつこつと落とし続けたら、重爆撃機一機につき10名以上も必要な搭乗員の損耗により、流れが変わり本土空襲は無かったのではないかと。
 そして飛燕。最大の評価点は、「リモデルに対応する可動主翼」構造。構造的に、リモデル時に主翼取り付け位置を容易に前後移動できる──エンジン変更による重心移動に対応できる機体設計だったんだそうな。あと円満な飛行性能──速度一本やりでも旋回性能一本やりでもない──を発揮したであろう、高レヴェルの万能性を備えた機体設計。史実では水冷V型12気筒エンジン(ダイムラーベンツ製のコピー)が、誉(空冷星型複列14気筒)以上の絶不調に泣いたそうですけど。水冷エンジンが不調でなかったとしても、(以下、すべて空冷星型エンジンで)金星→誉→ハ43へと段階的に高出力エンジンへとリ変更してゆくべきであったと。史実では、やっと昭和20年になってから金星エンジンに換装され、五式戦闘機(愛称なし?)として制式採用されたのですけど……。
 他機種では、一式戦闘機「隼」(陸軍機)および零戦(海軍機)のみがリモデルの対象として選ばれています(爆撃機・艦攻・艦爆など、純戦闘機以外は除いて。それらも、機種絞り込み・リモデルが試考されています)。しかし、隼に金星/零戦に誉が積めたかしらねぇ……(エンジンと機体が、中島と三菱の互い違いだ!)。
 鍾馗や飛燕のリモデルにしても、お化けエンジンを積んだコルセアF2G(アメリカ海軍機)みたいな期待はずれにならなかったかしらねぇ。スピットファイア(イギリス戦闘機)やBf109(ドイツ戦闘機)のような、初期型から二倍以上の高出力エンジンへとリモデルされていった機体と違って……。

# 個人的には層流翼の鍾馗は、(三面図が起こされていて)正面形も平面形もカッコ悪いと思うぞ(笑)。誉エンジン搭載による長っ鼻──細長い機首は兎も角。

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2009年8月14日 (金)

MODEL ART PROFILE No.5 中島キ44二式戦闘機 鍾馗

Modelartprofile5ki44 「MODEL ART PROFILE No.5 中島キ44二式戦闘機 鍾馗」(モデルアート社)を読みました。
 B5版130ページ弱で2300円。同シリーズ「F-104」より200円安いのは、実機が残っていなくて、敗戦後少しくまでのモノクローム写真しかないからかしら?

 樹脂模型の製作ガイドなどが、17ページ。巻頭6ページが、新発売である世界初1/32モデルの製作ガイド。残りは、1/48モデルの塗装ガイド。(いずれも、ハセガワ製)
 残りページは実機について。カラー・パターン図や、(想像を含む)ディティール絵も含めて。

 写真主体なのは、42ページ。「世界の傑作機」などで見た、既出の写真が多し。蝶型フラップ全開の駐機写真(P.78)は、初めて見るかも。
 写真以外の売りは、「二式単戦(二式単座戦闘機)」ではなく、単に「二式戦」とも呼ばれていたらしいという、当時資料に基づいた新たな考証かしら?いままでは二式複戦「屠龍」と混同しないようにと、それぞれ呼び分けられていたけど。

# 野原茂さんは、鍾馗のエンジンにも辛口だー(笑)。

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2009年3月25日 (水)

National Museum of the USAF - Photos

 アメリカ空軍博物館のサイトに、YF-23のリストア中・後の写真がありました。YF-23とは、YF-22(現F-22ラプター)と主力戦闘機の座を争った競作機です。
 下記サイトの「Photos」ページでYF-23で検索したら、約20枚の写真が見れました。

National Museum of the USAF - Home
http://www.nationalmuseum.af.mil/

 上から見ると、菱形に見える両主翼。斜めに付いた双尾翼。『マクロス』に、そのまんま出てきそうです。
 他にも、X-32、F-20、MERLINなどで検索しました。X-32も競作相手のX-35(F-35)より、野心的で格好いいと思うけどなー。

 いやー、掘り出し物でした。多分(笑)。
 NASAドライデンのサイトは、いままでも定期的に写真を見てましたけど……。(下記サイトの、Multimedia配下のDryden Photo Gallery)

NASA - Dryden Flight Research Center
http://www.nasa.gov/centers/dryden/home/index.html

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2009年1月 1日 (木)

現存米軍大戦機図鑑II

Ww2warbirdsusnavy 「大戦機シリーズ 現存米軍大戦機図鑑II 海軍戦闘機編」(枻出版社)を読みました。
 A4版の、全カラー130ページ弱。副題で「いまも飛ぶ米海軍機の勇姿!」とあるとおり、飛行可能機が大半の、大きめ写真主体のムックです。表紙は、ヴォートF4Uコルセア。

 グラマンF8Fベアキャットの大きめ写真が珍しく、買いました。究極のレシプロ戦闘機とも言われるF8F。しかし大戦に間にあわなかったこともあり──実戦部隊が空母で日本に向かう途上で降伏されてしまった──、注目度が低いようです。単独の書籍も無いようで──「世界の傑作機」ではF7Fタイガーキャットと併載──、国内メーカー樹脂模型も無し。
 エアレースで活躍した/している名機もあるけど、やはり究極のレシプロ戦闘機と言われエアレースで活躍しているイギリス軍機ホーカー・シーフューリーよりも、現存する飛行可能機が少ないようですし。(シーフューリーも、日本語の単独資料は絶無じゃないかしら?)
 そんなこともあり、エアレーサー改造機じゃない大戦機カラーF8Fの、しかも大きめ写真は今まで見たことありませんでした。

 F8Fの写真は、合計17ページ(内、エアレーサー改造機レアベアが4ページ)。内、見開きの大写真が二葉(どちらも大戦機カラー)。という訳で、F8F好き(?)としては満足。他機に比べて、特に扱いは大きくありませんけど(笑)。
 ほとんど知識が無かった艦上攻撃機──爆撃/雷撃機についても、興味ぶかかったです。特にダグラス機が。

# 既刊の「陸軍戦闘機編」は、見送りました。P-47・P-51などの現存機写真は、F8Fのようには飢えてませんからね(笑)。(F4Uもね。F2Gの、怪物エンジンR-4360の写真は良かったけど)

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