2015年5月 3日 (日)

生頼範義 緑色の宇宙

Ohraigreen イラストレーション別冊『生頼範義 緑色の宇宙』(玄光社MOOK)を観ました。2014年12月に出た。
 生頼さん、2011年に76歳で休筆されてたんですね。脳梗塞を発症し、療養生活に入って……。

 A4変型判の161ページ。映画・書籍・広告など、膨大な仕事作品を収録している(純粋絵画やライフワークも少しく)。
 本書を書店で最初に見かけたときは、なつかしさをおぼえるもスルー。しかし平井和正さんの訃報(2015年1月)に触れ、やはりと思い直し購入。それまで生頼さんを“すごい”とは思うも、“好き”とは感じていませんでしたが。

●映画
 『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』国際ポスター(1980年)を、描かれてたんですねぇ。
 『復活の日』イメージボード(1980年)は、まるで連作絵画の如き。
 『逆襲のシャア』ポスター(1988年)は、可も不可も無くかなー。仁王立ちνガンダム、決してカッコ悪くはないけど(笑)。

●SF
 アジモフ死後の『新ファウンデーション』三部作(1999~2001年)は、描かれてたのを忘れてました(多分)。読んでたのに。レトロフューチャーな宇宙戦艦で、砲身が上下左右から山ほど突き出てて素敵!(笑)
 『さらば宇宙戦艦ヤマト』の未発表画(制作年不詳)は、斜め45度前ぐらいからのが酷し。真後ろからのも、ギリギリな感じで。後年に描かれた戦艦大和は、とても素晴らしいのに(笑)。
 『幻魔大戦』など平井和正さん作品のは、やっぱり感慨ぶかし。かつては不覚にも、大友克洋さんのカヴァー絵の方がスタイリッシュと思っていましたが(笑)。『アンドロイドお雪』カヴァー絵(1975年)は、初見からスタイリッシュさに度肝を抜かれたけど。
 『現代の家庭医学』(1968年)なんてのも、手がけられたんですねぇ。大学を訪ねて、電子顕微鏡をのぞきスケッチされたそうな。

●女神
 「SFアドベンチャー」は、月刊化(1980年6月)から91回も表紙を描かれたんだと。神話・歴史などの女性をモティーフとして。
 本書のカヴァー絵は、「ムー」創刊号(1979年)の表紙絵だったものだと。

●ゲームビジュアル
 『信長の野望』シリーズ他いろいろ、コーエー作品のパッケージ等も描かれてたんですね。知らなんだ(笑)。

●モノクロ画
 HOPE(タバコ)広告シリーズ(1990年ごろ)は、一瞬写真かと見まがう超絶リアリティ。部位によっては、写実的でないタッチも使われてるのに……。
 吉川英治『宮本武蔵』の新聞広告(1966年)を手始めとする(?)、時代/歴史ものフィクション/ノンフィクションのも素晴らしい。点描/線描による、緻密かつダイナミックなタッチで。

●戦記物
 「国内外の軍艦を同一縮尺で描くことが生頼の後年のライフワークになった」そうな。最後の描きかけも、空母であったと言う。

●書籍カバー・挿画
 『スケバン刑事1誕生』(1995)カヴァー絵は、金髪ヤンキーと言うより白人コスチューム・プレイに見えちゃう(笑)。

●対談 寺田克也×金子ナンペイ(2014年)
 寺田さん、「ずっとデジタル」描きだそうな。

●座談会 加藤直之×開田裕治×麻宮騎亞×オーライタロー(2014年)
 加藤さん、生頼さんの軍艦(および戦闘機)画に比して「高荷義之さんは戦車が上手い。ただ、零戦を描いても鉄で出来たような零戦だった。」と。重量感あり過ぎで、ジュラルミン製に見えないと(笑)。
 オーライタローさん(画家)によると、生頼さんは『エイリアン』が好きで「「グラディエーター」を何度も何度も観て」たそうな。
 連作シリーズ「破壊される人間」(1981年)は、純粋絵画(?)と思しいもの。非リアリスティック且つリアルな大作で、幅約6mも有ったりする。

●モノクロ画・スケッチ
 「SFアドベンチャー」表紙絵スケッチは、方眼が描かれてるのが興味ぶかい。

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2014年2月 9日 (日)

小出由紀子(編著)『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』

Henrydarger 小出由紀子(編著)『ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる』(コロナ・ブックス)を読みました。『非現実の王国で』画文の抜粋、プロット及び解説、作者ダーガーの評伝などが収録されています(2011年の展示解説がベースだそう)。

 「アウトサイダー・アート」と言えば、最初に名前が上がる(?)ヘンリー・ダーガー『非現実の王国で』。『非現実の~』または『王国』はダーガー自身による略称で、正式タイトルは『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ-アンジェリニアン戦争の嵐の物語』なる膨大な物語・注釈およびイラストの集成である。
# ダーガーの略歴および『王国』の概略は、Wikipediaをご参照ください(笑)。

 ダーガー80歳の1972年(翌年の誕生日翌日に死去)に、大家さんによって“発見”された『王国』作品群。19歳ぐらいから人知れず書き/描き続け、人生後半の40年を過ごした部屋の退去に際し大家に処分するように頼んだもの。作品の存在を知らせず、他の膨大なゴミ──創作の糧として拾った古新聞/雑誌など蒐集物──と共に消えて無くなっていたかもしれない。
 大家さんも偉かった。写真家・工業デザイナーであり、工科大学でデザイン教師も務めたという男性。人づきあいの無い貧しい孤独な老人を追い出したりせず──何度も近所の人から促されたらしい──、ダーガーの人知れない創作に間接的に寄与した。作品“発見”後は、その価値を世の中に訴え続けた。

 16歳で精神薄弱児の施設を脱走し、故郷のシカゴに戻って生涯を過ごしたダーガー。73歳まで雑役夫として働き続け、親しい人物は青年期に年長の友人1人しかいなかったらしく……。
 敬虔なカトリックで神を愛し・すがったが、同時に神を恨み・突き放そうとしたらしいダーガー。それが、『王国』にも色濃く反映されている。正義サイドはキリスト教の国々で、悪の軍勢は悪魔信奉および無神論者(笑)の国々(ダーガーが反共であったかは不明)。自らの不幸──最も大切な女児写真(新聞の行方不明者記事の切り抜き)紛失や養子をもらい受けたいと望むが認可されないこと等──をはかなみ、神への恨みから『王国』の子どもらが目を覆わんばかりの悲惨な目に遭い続ける。
 1917年に25歳で徴兵されるも、医学的理由により数ヶ月で除隊(視力の問題らしい)。それが劣等感となり(?)、自身と同名のキャラクターを『王国』で活躍させる。優秀な軍人かつ児童保護協会の会長(笑)として。また神を恨むように“も”なると、同名キャラクターを敵サイドでも活躍(暗躍?)させるなど、同名の複数人が登場。これらの投影・妄想を、いったい誰が笑えよう!

 ヴィヴィアン・ガールズ──『王国』の主役は、7人姉妹のプリンセス。不老で、永遠の(?)5~7歳であるらしい。諜報/工作活動をもっぱらとし、進んで危地へと赴くガールズ。しかし子供奴隷らとは異なり、絶体絶命の危機を何度も何度も寸前で脱する(笑)。
 ダーガーは地理・歴史が好きで(気象も?)、南北戦争を『王国』のモデルとしたそうな。南部人が怒っちゃいそうだねぇ(笑)。

 絵が進化していったか判然としないけど、まあ酷いねぇ。『進撃の巨人』持ち込み原稿より遥かに(笑)。それでもヘタウマな味と言う以上に、人を惹きつける魅力を有している(と思う)。万人受けは、しなかろうけど。
 カヴァーの絵は、「ブレンゲン」──『王国』世界の怪異の存在。多種多様な、妖精・精霊・妖怪の如き。いずれも(人間の)子どもが大好き(笑)で、ガールズおよび子供奴隷たちに味方し敵を蹂躙する。
 上記の如く子どもらが残虐な目に遭うようになり、それは絵でも同様。流血し、手足をもぎ取られ、腹を裂かれて内臓と骨をさらした、夥しい数の子どもの死体。下手さも相まって、いま観てもギョッとする……。
 戦争終結後は、対照的に平和な光景が連綿と。ガールズと開放された子供奴隷たち(?)が穏和に暮らし、咲き乱れる草花やブレンゲンらと戯れている……。

 ダーガー及び『王国』について初めて知ったのは、やはり2011年の展示会の時だったかなあ(行かなかったけど)。その後に画集(?)の存在も知ったけど、7000円近くするからねぇ(ダーガーに追ったドキュメンタリー映画のDVDも有り)。
 ゆえに2000円弱の本書は、大型書店の美術コーナーで見つけるなり飛びつきました。ニッチな本(?)に出会えてラッキーと思ったら、直後に新聞の書評欄で取り上げられてたけど(笑)。

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2008年2月 1日 (金)

TOMOVSKY ILLUSTRATIONS 1992~2007

Tomovskyillustrations 『TOMOVSKY ILLUSTRATIONS 1992~2007』を見ました。前に何度か紹介している自作自演歌手(日本人)の、初(?)イラスト集です。
 約20cm四方の72ページで、2625円。下記ページから、表紙を含む九枚のサンプル画像が見れます。

遊タイム出版「TOMOVSKY ILLUSTRATIONS 1992~2007」TOMOVSKY(オオキトモユキ)
http://www.u-time.ne.jp/books/art/u201tomovsky.html

 2000年ぐらいまでは表紙絵のような、厚紙にクレヨンやアクリル絵の具などで描いたのがほとんど。2002年ぐらいから、PCで加工したり着色したりしたのが増えています。
 絵柄は、すべてイマジナティヴ。抽象的だったりポップだったり。デ・キリコという画家さんに、影響を受けたのだとか。

 過半のイラストが、自分のCD/DVDジャケット・ブックレットなどに用いたもの。2004年にthe pillowsのCDジャケットのために描いた二枚などの提供品、未発表品も含まれています。
 初期数年の絵は、顔の中のパーツも描かれてるキッチュな感じでした。同じく厚紙・クレヨン時代ですが少し後の絵──表紙絵のような──が、初めて触れた絵柄でもあり、わたしにはフィットしますねぇ……。

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2007年3月12日 (月)

中村宏|図画事件1953-2007

Nakamurazuga  中村宏|図画事件1953-2007を観てきました。出かけていって絵を観るのは、クリムト《パラス・アテネ》以来です(出先や旅先でぶらりと寄るのは除いて)。

中村宏-図画事件
http://zugajiken.jp/
Art inn美術情報満載のwebマガジン
http://www.art-inn.jp/tokushu/000204.html

 上記一番目の特設サイトのトップ絵──《円環列車・B-飛行する蒸気機関車》(1969年)を新聞記事で見て、実物を観たくなりました。
 無機質で漫画イラスト的なデフォルメの効いたタッチによる、ファンタジックな心象風景に惹かれました。セーラー服の女学生を題材に入れながら、萌え要素などありません。いや、いまで言う「キモかわいい」を約40年前に先取りしてたのかもしれません。

 ガジェット美術(?)たる《総銅製機甲本イカルス》も格好良かった!目を凝らしても、浮き彫りの字はよく読み取れませんでしたが(笑)。表紙のみ銅製の、稲垣足穂との共著『機械学宣言―地を匍う飛行機と飛行する蒸気機関車』も展示されてました。
 装丁・挿画を手がけた『夢野久作全集』も素敵でした。角川文庫版『ドグラ・マグラ』の表紙絵も強烈でしたが、それ以上に強烈──エロティックというよりグロテスク寄り──でした。

 収蔵物展示の中では、舟越桂の彫像三体が良かったです。実物を観るのは初めてでしたが。素描も一枚ありました。
 性別・年齢が不鮮明で無個性的に思われる木彫りの半身像ですが、一つ一つよく観ると、暖かみと味わいが感じられます。

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