« 今おもしろい落語家ベスト50 | トップページ | 遠藤浩輝『オールラウンダー廻3』 »

2010年3月 1日 (月)

明石康『「独裁者」との交渉術』

Akashiyasushi 明石康/木村元彦(インタビュー・解説)『「独裁者」との交渉術』(集英社新書)を読みました。
 明石さんは日本人初の国連職員だそうで、90年代序盤のカンボジアおよび90年代中盤の旧ユーゴスラビアで国連代表を務めた方です。(日本では、緒方貞子さんより不人気な気がする……)

 書名について明石さんは、あとがきで「やや重すぎる」と述べています。ミロシェヴィッチやカラジッチやトゥジマン(以上、旧ユーゴスラビアの人々)、プラバーカラン(LTTE)ら強力な権力者とは交渉したが、スターリンやヒットラーなど掛け値なしの独裁者とは交渉していないと。
 それでも、興味深い本でした。序盤で国連職員になるまで(軍国少年~フルブライト留学生時代)を語り、国連代表としてのカンボジア及び旧ユーゴスラビアでの活動、日本政府代表としてのスリランカでの活動などについて回顧しています。

 国連代表として、PKFやNATO軍と連携していた明石さん。ゆえに無論、軍事力無用論者ではありません。憲法9条の第2項について、「未来を先取りしすぎである」旨やんわり批判していたり。
 核兵器についても、最小規模で抑止力として残すべき──どこが持つか問題だが──と明言しています。全廃したとしても、核兵器が発明されてしまった以上、新たな製造を絶対に防ぐことはできないからと。
 かようにリアリストですが、もちろん勢力均衡やパワーポリティクスの人ではありません。「中立性」よりも「不偏性」をたっとび、普遍性や原理原則をたっとびながらも、手続き・体制などは目的でなく手段だと柔軟な考え(違法者・脱法者ではない)。
 平和は現状維持──ともすれば既得権益の擁護にとどまらず、民主主義は多数決の横暴──少数者・弱者への蹂躙を正当化するものではない。というような。

 印象的だったのは、ジェレミー・ボーダ提督──「NATO南部方面軍の総司令官」であったアメリカ海軍人──への言及です。戦術的な戦果に汲々としない視野の広い戦略家として、また民主国家の──文民統制下の制服軍人の鑑として、絶大な賛辞を贈っています。(ビュコック提督を思い出すね)
 ボーダ提督は高校中退で海軍に入り、たたき上げで海軍作戦部長──海軍の最高位まで上り詰めたのだそうな。しかし、いろいろあって自死してしまったという……。

|

« 今おもしろい落語家ベスト50 | トップページ | 遠藤浩輝『オールラウンダー廻3』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 明石康『「独裁者」との交渉術』:

« 今おもしろい落語家ベスト50 | トップページ | 遠藤浩輝『オールラウンダー廻3』 »