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2009年7月27日 (月)

葛原和三『機甲戦の理論と歴史』

Strategysb10  葛原和三『機甲戦の理論と歴史』(ストラテジー選書)を読みました。「東長崎機関」で、神博行さんが推奨していたので。戦車ファンじゃないけどね(笑)。

戦車ファンなら読め!!『機甲戦の理論と歴史』 - なんとなく読書感想文 - 東長崎機関
http://www.higashi-nagasaki.com/d_r/dr2008_075.html

 なるほど、素晴らしい。『銀河英雄伝説』を読んで/観て「用兵」に興味を感じるような方なら、知的興奮をもって楽しく読めるはず。
 また軍は、規律を重んじる──(文字通り)自他の生死存亡がかかった任務の性質ゆえに命令遵守が基本的には絶対で、硬直化・保守化が起こりやすい組織である(らしい)。しかし時々刻々かつ時代と共に変化する状況──もちろん時間軸上の相違だけではない──に、小~大の目標達成の為に柔軟に対応しなければならない。そのような組織の弊害に対処する、編組・運営などのエッセンスに興味を持つような方にも。(経営的な読み替えを促すような、直接的な記述は無いが)

 「機甲」は、普段は耳にしない用語ですね。(わたしのような)少しく軍事を知ってる者なら、機甲部隊って「戦車」中心の部隊?、ぐらいに思うでしょう。
 機甲は「装甲機械化」の略称とも言われ、「機動」と「防御力(≒火力)」を兼ね備えることだそう。機動とは、相手(敵)に対する目的を持った相対的な運動のこと。(物理的・主観的に)自在に動くだけでは、機動とは言わない。それゆえ典型的な機動は、「迂回」であると。
 機甲戦←火力戦(銃砲)←機動戦(騎兵)←格闘戦(歩兵)と更新されて──時には前後して──きた陸上戦力を概観し、最初に機甲戦の意義を整理しています。他にも一般的な用語でありながら、使用意味合いが異なる「持久戦」「決戦」などについても。(「断固たる怒涛の攻撃」のような、精神論的な記述は皆無)
 戦力の更新とともに命令形態も、訓令(達成すべき任務を設定し、それにいたる過程の実現手段は部隊指揮官に任せる)←命令(詳細に行動内容を指示し、遠隔地に行かせる)←号令(戦場での直接行動指示)と更新されてきた(もちろん、号令・命令も無くなりはしない)。そこで、「ドクトリン」が登場し、下記のごとく引用説明がされています。

 「ドクトリン」は、「軍隊あるいは軍の部隊が国家目標の達成に関わるに際して、その行動の指針となるべき基本的な原則である。権威あるも適用に際しては判断を要す」(『米国防省用語辞典』)と定義されている。この注意書きに書かれているように、戦術教義やドクトリンは、決して「教条(ドグマ)」(dogma)とならないよう硬直化を戒め、絶えず改革し続けるよう努力することが保守的になりやすい軍人にとって極めて重要なのである。(P.20)

 以上ぐらいが序説。以下、ナポレオン一世より後の近代ヨーロッパ(アメリカ、ロシア──ソヴェト連邦を含む)の陸戦史から、機甲戦の発生・発達にいたる過程を概説しています。ドイツ(←プロイセン)の「電撃戦」・ソヴェト連邦の「縦深戦略」の両理論の成立および発展の過程が、とりわけ重んじられ。
 世界初の戦車マークIの実戦投入(1916)はイギリスで、現在の戦車の原型ルノーFT(1917年)はフランスが作ったそうですけどね。その「現在の戦車」とは、「直射火砲を搭載した旋回砲塔を有する装甲した装軌式の戦闘車両」と定義されています。
 「直射火砲」とは、弾道が直線的な火砲のこと。放物線を描く「曲射砲」──目標よりも上向きに発射して遠方に弧を描いて命中させる──ではなく。「直射」の理由は貫通力を優先するためで、砲身が長いのも発射速度を増すためだそう(滑空砲でもそうなの?)。「装軌式」とは、無限軌道──いわゆるキャタピラー式のこと。

 大戦後の戦車──メカニック及び戦車戦闘に関しては、やはりイスラエルが興味深いですね。運用思想──乗員の人命最優先で作られた構造ゆえに、「走る保険会社」と言われているらしい非コンヴェンショナルな「メルカバ」戦車。典型的な「内線」事情──前大戦までの近現代ドイツにも通じる国勢──など……。
 近現代の日本の機甲部隊についても、それぞれ発足までと変遷について、もちろん多く述べられています。著者は、戦車部隊出身の陸自の方だそうですから……(現職は、研究・教育方面)。

# 日本降伏後の8月18日、北海道へと千島沿いに向かおうとするソヴェト軍を、復員準備中の陸軍戦車部隊が撃退してたとは知らなかったよ!恐るべし「縦深戦略」!(違うか)

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