スタンリー・キューブリック『博士の異常な愛情』
アメリカ/イギリス映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1963年)を、初めて観ました。BSプレミアムでやっていたので。
前に紹介しているスタンリー・キューブリック監督の映画です。タイトルからマッド・サイエンティストの大活躍を期待してましたが、ほとんど違いますねぇ(笑)。「博士の異常な愛情」なる邦題からして、意図的か否か誤訳ですし……(副題は、意味どおりの直訳っぽい)。
VFX──ミニチャー爆撃機および背景映像の合成は、同じ監督の『2001年宇宙の旅』(1968年)に比して格段に“しょぼい”です。それも意図してなのか、“カウボーイ”少佐による極限ロデオの滑稽さをいや増してるけど(笑)。
現実のキューバ危機(1962年)などが、どの程度の影響を本作に与えたのか。やや喜劇的に核報復戦略をシミュレートし、救いがたい“愚直さ”を思考実験して示す……。途中まで、そんな印象で観てました。敵の性悪説を前提に用意した戦略が、味方への性悪説の適用を(原理的に)徹底でき得ないゆえに──それをしようとしたのがスターリン?──自滅の危機に瀕する。そんな展開だったので。
でも、違うようにも感じますねぇ。単純に落語の如き滑稽噺なのかも、と。江戸の長屋の住人も、アメリカ大統領および「ベスト&ブライテスト」らも大して変わらないと……。
アメリカ及びソヴェト間の核抑止は、大々的な全面報復を前提としていた。どちらかが核攻撃した場合、やがて双方によるICBM・戦略原潜・戦略爆撃機などを総動員した全面核戦争へと至るのも辞さない。そうならないために、それが可能な即応体制を維持して対峙する二律背反。「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」の警句を、極限までに拡大解釈した……。
当時のアメリカ戦略空軍は、B-52をソヴェト周辺──ギリギリ文句を言われない辺り?──に24h滞空警戒させていた。ICBM/SLBMの命中精度がまだまだだったからなのか、核爆弾を積んだ最新鋭の大型爆撃機を。ある時、そんな当直部隊(?)の滞空警戒中34機に「R作戦」──核攻撃命令が下る。
(架空の?)「R作戦」とは即応時の指揮系統混乱・遅延──大統領が核攻撃を命令し実行されるまでの──を想定し、そんな場合に当直(?)戦略爆撃部隊司令が発動できる作戦であった。発動後の滞空警戒爆撃機は、当該司令部の暗号命令しか受け付けなくなる。当該司令部は外部との接触を断ち、基地攻撃に備える。それが当該司令(将軍)──滑稽な反共陰謀論の強迫観念に凝り固まり人知れず正気を失った──により、先制攻撃を受けたと欺瞞され(?)報復の「R作戦」が発動されたのだ。
放っておけば数時間後に、ソヴェト連邦ICBM基地に対して核攻撃が為されてしまう。大統領および統合参謀たち(?)は、当該司令部に中止命令を出させるため基地への攻撃命令を下す。並行してソヴェト大使を呼びソヴェト首相にホットライン電話をかけ、率直に事情を明かして爆撃機の撃墜を依頼する。もしソヴェトが核攻撃を受けると人類「絶滅装置」が、文字どおり機械的に発動してしまうと明かされたので。秘密裏に配備されソヴェト国内でも公式アナウンス直前だったため、とち狂った司令も考慮してなかったのだ……。
「絶滅装置」とは特殊な核爆弾により、全地球規模に放射能の雲(?)を93年間持続させるものであった。その兵器の胆となる根本概念ゆえに、「絶滅装置」の解除は不可能(あるいは短時間では困難?)である。果たして、その発動は防げるのか──。
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