クラーク・アシュトン・スミス『ゾティーク幻妖怪異譚』(創元推理文庫)を読みました。創元社の出版物、買うの初めてかも(笑)。
1932~1953年に発表された、地球最後の大陸「ゾティーク」を舞台とした物語。詩(巻頭の一篇)および小説16篇からなっています。作者はラヴクラフトと親交があり、「クトゥルフ神話」ものも書いたんだそうな。
ゾティーク幻妖怪異譚 - クラーク・アシュトン・スミス/大瀧啓裕 訳|東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488541026
すごく良かった。久方ぶりに、小説を読んで得したと思いました。
簡潔にして流麗な文章。(解説を除き)約410ページで、翻訳ものとあって文字がぎっしり。読了まで相応に時間かかりますが、すんなりと読み下せる文章でした。文章で衒っている、(初期は除いた)『吸血鬼ハンターD』シリーズより読みやすい。翻訳も良いんでしょうね。
「ゾティーク」全作品──収録17篇のタイトルは、下記のとおり。これらタイトルの二・三個以上にピンと来たら──気になったら、断然お勧めいたします(笑)。
「ゾティーク」
「降霊術師の帝国」
「拷問者の島」
「死体安置所の神」
「暗黒の魔像」
「エウウォラン王の航海」
「地下納骨所に巣を張るもの」
「墓の落とし子」
「ウルアの妖術」
「クセートゥラ」
「最後の象形文字」
「ナートの降霊術」
「プトゥームの黒人の大修道院長」
「イラロタの死」
「アドムファの庭園」
「蟹の支配者」
「モルテュッラ」
はるか未来(?)の、太陽の輝きが弱まった世界。現在の東アフリカから南アジアに及ぶインド洋沿岸“弧”の地域やインドネシア群島が合わさって、地球最後の大陸「ゾティーク」が形成されていた。周りには島々もあり、(物語には出てこないが)南には現在とは別のオーストラリア島もあるらしい。
現在の宗教は忘れ去られ、科学工業文化は微塵も無くなっていた。陸上は馬など、海上はガレーなどが移動手段。火薬も存在せず、武器・兵器はヨーロッパ中世以前の状態だった。
科学文明の忘却に反比例して──弱まる太陽に比例してか、代わってゾティークでは魔術の長い歴史が積み上げられていた。誰もが能くはしないが、一部の人々/地域においては。
なおも忌まわしいとされる降霊術(≒死体復活術)を、隠然と行う者もいた。あるいは、公然と行われる地もあった……。
「降霊術師の帝国」は、あっさり淡々とした感じ。開幕の小説とあってか。二篇目の小説からはビンビン。「これで終わり?」ってのもあるけど(笑)。
少なからぬ陰惨な描写・悲惨な展開も、こけおどしではない無駄を排した文章が素敵です。プロットは、さほど凝ってはいませんけどね。時には、起承転結をなしてなかったり。
でも、いいんですねぇ。各文・各篇・全編、すべてが幻妖を綾なしていて。
とか言いながら今まで、本格(?)幻想怪奇小説を読んだことがありません。それっぽいので読んだのは、小林泰三『玩具修理者』(←「クトゥルフ神話」風味?)とクリス・エヴァンス『鉄(くろがね)のエルフ』ぐらいかしら。有名どころはキング(の一部?)や「クトゥルフ神話」ものでしょうが(日本なら江戸川乱歩も?)、いずれも量が多くて手を出しにくいしね(笑)。
でも、フィッツ=ジェイムズ・オブライエン『金剛石のレンズ』は読みたいです。『ゾティーク幻妖怪異譚』の翻訳者が、昨年に訳出されたものらしいので……。
金剛石のレンズ - フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/大瀧啓裕 訳|東京創元社
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488538026
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